2011年08月08日

21st keynote 110808OAリスト (ブラジル・MPB)

夏真っ盛りですが、いかがお過ごしですか?暑い時の過ごし方は暑い国の人に倣え・・・ということで、今夜はブラジル特集。ただし、ありふれたボサノバ特集では、耳の超えた21stKeynoteリスナーの皆さんは納得しないでしょうから、今夜はムジカ・ポプラーレ・ブラジレイラ、つまり「ブラジルのポピュラーミュージック」を特集してお送りします。



まずは、ブラジルのお勉強。地球の真裏・・・日本から一番遠い国である「ブラジル」という国は、かつて南アメリカ大陸の中の貧しい国でした。失政に失政を重ねて、95年代後半には2500%をというハイパーインフレに陥って、安ホテル一泊が1億クルゼイロ、もうお札の枚数で数えることが出来なくて、札束の重さで買い物したなんて時代もあったそうです。



それが今では「BRICs」といわれる「新興経済国群」の一員で、GDPも上から数えたほうが早いくらいにまでなっています。まぁ、勿論、都市部と内陸部の貧富の差の問題は未だに根深くて、全体的に見れば決していい国じゃありませんが、今やブラジルは世界の優等生です。



ブラジルといえば、やっぱり華麗な個人技で魅せる「サッカー」王国。2014年にはワールドカップも行われます。そして音楽では「ボサノバ」・・・ボサノバ、ポルトガル語のBossa=波、Novaは新しい・・・ということで、英語で言えば「New Wave」。サンバとかショーロという伝統音楽に対する新しい波です。1950年代にアントニオ・カルロス・ジョビンを始めとして、若手のミュージシャンが日夜カフェやバーで音楽談義を繰り広げながら創り上げてきた音楽様式で、囁やくような歌と、さざ波のような緩やかなビートが特徴で、瞬く間に人気になりまして、アメリカのジャズマンさえも、60年代に入ってマイルス・デイビスらのモードジャズに乗り遅れた人たちがこぞって取り入れたものですから、世界に広がって行きました。



ところが、70年代に入る頃になると、かつてのニュー・ウェイブはすでに「オールド・ウェーブ」になって、若い人達はアメリカからロックを輸入するようになるわけです。それが、ムジカ・ポプラーレ・ブラジレイラ、通称「MPB」なんです。では、前置きが長くなりましたが、早速MPBの代表選手「Djavan」の出世作、「Luz」から、スティービー・ワンダーのハーモニカをフィーチャーした「Samurai」からスタートです。



Djavan

M: Samurai / Djavan



これは82年の作品で、これこそがMPBを世界に知らしめた名盤と言われています。Samuraiもスティービー・ワンダーの参加に興味は集まりましたが、その他にもハービー・メイスン、アーニー・ワッツ、ヒューバート・ロウズという、ジャズやフュージョンの方面で有名なスタジオミュージシャンが多数参加して、「Djaban・・・誰?」っていう人でも、クレジット買して、聞いてみたら驚いたって人が多かったんじゃないでしょうか?



ところで、今日のキーワードにしているMPBは、実は非常に曖昧な言葉です。単純に訳したら「ブラジルのポピュラーミュージック」であり、ボサノバ以降に現れてきたブラジルのロックもポップスも何もかもひっくるめてMPBですからね。そういうことで、もう少しミクロ的に時代を追って行きますと、一つ、重要なムーブメントがあることに気が付きます。それが「トロピカリズモ」。



60年代〜70年代は、学生運動を経て次第にアメリカナイズされていくブラジルの文化や芸術を守ろうとする動きがありましたが、これがもう過激なほどの閉鎖性とマンネリでどうしようもない状態でした。この頃のブラジルは軍事政権がブラジルを牛耳っている時代ですから、滅多なことも言えなかったのでしょう。で、それに対するカウンターカルチャーとして盛り上がったのが「トロピカリズモ」で、その立役者は、いまでは「ブラジルの粋な男」と言うだけ
で通じるカエターノ・ヴェローソと、その親友、ジルベルト・ジルという二人です。



彼らが、1968年にリリースしたアルバム「トロピカリア」は、ビートルズのSgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandに影響を受けたコンセプトアルバムで、発売から3ヶ月で2万枚以上を売り上げたヒット作になって、その後のMPBを随分変えることになるんですが、この時点では、ことはそんなに上手く運びません。



ここに参加していたアーティスト達が反政府的な活動を始めたため、軍に睨まれてその年の冬には二人は逮捕されて、国外追放。それによってせっかく盛り上がったムーブメントもあっさり萎んでしまいました。ところが、軍事政権も終わって、今や女性大統領も誕生して経済成長も著しいブラジルにあって、90年代に入っるとトロピカリズモが最評価されます。93年にはカエターノ・ベローソとジルベルト・ジルが再び組んで「トロピカリア・2(ドイス)」をリリースします。では、この中からヘビーなビートがカッコイイ「as coisas」、そして、カエターノ・ベローソと並ぶMPBのスタイリスト、マルコス・ヴァーリが、2003年、イギリスのクラブ系レーベル・ファーアウトに残した作品、「Nova Bossa Nova」から、非常にクールなインストナンバー「フレイオ・エアロダイナミコ」をお送りしましょう。



Tropicalia2 Marcosvalle


M:as coisas / カエターノ・ヴェローゾ&ジルベルト・ジル
M:Freio Aerodaynamico / Marcos Valle



さて、MPB界には女性アーティストにも重要人物が多くいますが、一番初期の頃に人気だったのがエリス・レジーナ。彼女は、アントニオ・カルロス・ジョビンとの共演作もあったりして、ボサノバ歌手というイメージもありますが、ジルベルト・ジルやカエターノ・ヴェローソ、ミルトン・ナシメントといったトロピカリズモの面々とのレコーディングも多く、その一員としても重要な位置を占めている人です。



69年のインタビューでは堂々と「ブラジルはゴリラに支配されている」などと言い放っってしまう、いわゆる女傑ですが、1982年、36歳の若さで亡くなってしまいます。その晩年のエリス・レジーナに楽曲を取り上げられて、コンポーザーとして頭角を表してきた女性アーティストがJOYCEという人です。彼女は勿論70年代から音楽活動をしていましたが、彼女が注目を浴びたのは1980年にリリースした「フェミニーナ」というアルバムでした。



だいたい軍事政権が牛耳っているような国では人権侵害はありますし、女性の地位は低くて当たり前みたいな所がありますが、そんな時代に置いて、「女性が女性の立場で、女性を歌う」なんて、画期的と言わずして、なんと言いましょう。では、そのジョイスの出世作「フェミニーナ」から、力強いギターに煽られるようなスキャットが印象的なタイトル曲「フェミニーナ」、そしてもう一組女性ボーカルをフィーチャーしたOs Novos Bianosの名盤、アカボウ・ショラーレ(1972年作品)から、「チニンド・トリンカンド」をお送りしましょう。



Joyce Osnovosbianos



M:Feminina / Joyce
M:Tinido Trincando / Os NovosBaianos



Os Novos Bianosというバンド名は「新しいバイーア人」という意味です。これは、マルコス・ヴァーリやジルベルト・ジルが国外追放されたあとを同じバイーア州出身の彼らが引き継ぐという意思が込められた名前のようです。相手は軍事独裁政権で、下手したら消されてしまう危険もあるのに、ブラジルの人たちは随分気骨にあふれています。



なにより、このOs Novos Baianosは、ライナーによりますと、軍事政権下の警察の追及を逃れながら音楽は勿論、NovosBaianosフットボールクラブというチームも作ってサッカーまで楽しんでいたっていうんだから、見上げたもの。ボーカルもなかなかキュートな女性の声でしたが、こちらはバンドの歌姫、ベイビー・コンスエロという人でした。彼らは90年代後半に再結成して、元気に音楽活動を続けていると聞くと、本当に嬉しくなりますね。



ブラジル特集、Part-1、そろそろ最後の曲をご紹介しましょうか。



ブラジルという国の音楽は、サンバやボサノバ、ジャズを貪欲に取り込みながら多種多様な発展を遂げて、芳醇な音楽を育んできましたが、中でも、いま私がハマってしまったのが、ブラジルのアース・ウィンド・アンド・ファイアと言われる「Banda Black Rio」です。



1976年結成のファンクバンドですが、3枚のアルバムを出した絶頂期の84年、リーダーが事故死してしまうという悲劇に見舞われましたが、15年後、その息子が意思を引き継いで復活するという、ものすごい「タフ」なバンドです。エッジが効いたカッコイイブラスが心地いいバンドですが、最後におかけするのは、新生Banda Black Rio、2001年の作品「Ribirth」から、ちょっとメロウで、いかにもブラジルのEW&Fという感じの「Sexta-Feila Carioca」をお聞きください。



Bandablackrio


M:Sexta-Feila Carioca / Banda Black Rio



いま、本家のEW&Fはモーリス・ホワイトがプロデューサーに退いて、方向性も変わってきていますから、このブラジル版EW&F、Banda Black Rioはブラス・ファンク・ソウルがお好きな方にはぜひ注目していただきたいバンドです。そして、Banda Black Rio、この7月にちょうど8年ぶりの新作、「Super Nova Samba Funk」がリリースされたばかりですのでこちらも要チェックです。



☆Part-2☆



そういえば、あまり「ブラジル、嫌い」って人は聞きません。実際ブラジルという国の好感度は、BBCの調査でもびっくりされるほど急上昇していて、2011年版国別好感度調査では、なんと2010年から9ポジション上げて、予めピックアップした25カ国中7位。因みに日本は5位、アメリカは8位です。



そんな資料も参考にしつつ、音楽の世界でもブラジル大好きな人は枚挙がなく、AORのマイケル・フランクスとか、ジャズのスタン・ゲッツ、ギターのパット・メセニー、リー・リトナー、日本でも坂本龍一などなど、ブラジルに乗り込んでレコーディングしてきちゃった人も目白押しですし、ブラジルフレーバーを散りばめた音楽って言ったら、数えきれないほどです。
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そんな中で、現在のMPBの中では最も重要なアーティストと言われているのがIvan Linsというシンガーソングライターです。1971年にデビューして既にその頃から、楽曲がエリス・レジーナやガル・コスタといった、大御所に取り上げられるなど、ローカルな範囲で注目されていましたが、本格的に彼が知られるようになったのは1980年代に入ってから・・・クィンシー・ジョーンズがアメリカで彼を紹介したのがきっかけと言われています。



Ivan Linsの楽曲は、心地良く流れていくメロディーを支えるコード進行がものすごく複雑。ジャズの素養もある人だから、分数コードやら、不協和音もガンガン使っていて、コピーなんかしようと思ったら大変らしいんですが、彼自身も、インタビューでは「コードに関してはトコトン検討する」というようなことを語っています。そういう、表立って見えないところにコダワルっていうのは、クィンシーとかリー・リトナーといったプロデューサーとしてのスキルが高い人から見たら「いい仕事しまんなぁ」って感じなのでしょう。



Ivan Linsの大ファンというミュージシャンも多いんですが、そんな人達が、「トリビュート・アルバム」を作ってしまいました。Ivan Linsは今もバリバリの現役ですから、さしずめ、「生ける伝説」ってやつですね。その中でも、スティングがカバーした「She Walks This Eatrh」・・・この曲で、スティングは2000年のグラミー賞を受賞していますが、まるで、スティングの自作曲のような完成度の高さにぜひ注目していただきたいと思います。



Aloveaffair


M:She Walks This Earth / Sting



☆Part-3☆



さてパート3は、またまた訃報です。当代イギリスのソウル・クィーンだったといって間違いないAmy Winehouse
さん。享年27歳。彼女はかなり破天荒で破滅的な生き方をしていましたから、その死因というのも案の定、「ドラッグ」と言われておりますが、世界は、またドラッグによって大切な才能を奪われてしまいましたね・・・



エイミー・ワインハウスは、2003年にアルバム『フランク』でデビューしましたが、これが、イギリスで67万枚を超えるヒットとなり、一躍トップスターとなりました。60年代初期のソウルミュージックを思わせる生演奏のバンドと、太くてハスキーな歌声がトレードマークです。2006年にリリースされた『バック・トゥ・ブラック』は、全英で1位・全米では7位を記録します。



ブリット・アウォーズでは最優秀女性ソロ・アーティスト。2007年に全英で最も売れたアルバムとなったわけですが、一方で、ドラッグやアルコール依存症などのスキャンダルも多くて、一番良くないのは人種差別的な発言でした。日本もその対象に入っていたから、彼女の音楽性はともあれ、「人間的には大嫌い!」という方も多いのは致し方無いところでしょう。



たしかに彼女は10代から酒と男に溺れて荒れた生活をしていましたが、ドラッグに手を出したのは、結婚相手の影響で、エイミーが人種差別的な替え歌を歌ったのも、彼がエイミーをドラッグで自失状態にさせて歌わせたものでした。エイミー自身も、後に離婚して、そのことについては謝罪しています。そういう「人間性のダメ」さと「音楽性の素晴らしさ」で賛否の分かれる人ですが、2008年のグラミーで年間最優秀楽曲賞など、5部門を受けた「リハブ」の迫力はいつまでも色褪せない名曲です。



あとは、時間が彼女の評価を決めてくれることでしょう。



Amywinehouse


M:Rehab / Amy Winehouse



今、Youtubeに上がっていますが、彼女の歌う「Will You Really Love Me Tomorrow」・・・これは、本当に切ないブルース調になっていて、これがまた泣かせるんです。本当は彼女も寂しい人だったのかも知れませんね。因みに、27歳で死去・・・といえば、ブライアン・ジョーンズ、ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックスもみんなそうで、「27歳Club」なんて言葉もあるらしいです。因縁めいていますね。



Amy Winehouseさんのご冥福を謹んでお祈り申し上げます。



と言う事で、次回は9月12日月曜日、夜9時にお会いしましょう。次回のテーマは「ロックで残暑お見舞い申し上げます」です。リクエストもお待ちしています>webmaster@fmkagawa.co.jpまでどうぞ。



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Special Thanks:今回のMPB特集におきましては、貴重なCDをご提供くださった Mr.Kubo、Mr.Okauchiに感謝申し上げます。m(_ _)m



おまけ:本日のBGMとして使ったCD



Sivuca


Ain't No Sunshine / Sivuca



Elistomjpg


3月の水 / Elis Regina & (A.C.) Tom Jobim



Ivanlins


Love Dance / Ivan Lins



ほか
posted by FM香川 at 16:40| Comment(0) | 蒲野 誠一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

★ 夏風景 1 ★ ナカイ

8月6日(土)
高松市内某高齢者施設で開催された
恒例の夏まつりに参加.。
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阿波踊りの皆さんも“本番直前”のこの時期、
毎年来てくれるそう・・。
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クライマックスは花火大会[E:annoy]

夜空に咲く大輪の花・花・花・・

「綺麗!」

なんかキュンとしちゃった[E:confident]

posted by FM香川 at 09:59| Comment(0) | 中井 今日子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする